058-こんな本が欲しかった

和田由美 2008 さっぽろ酒場グラフィティー 亜璃西社

 ネット上にある、とある酒場の情報を調べていた。そうして出会ったのが本書。

 ススキノを中心とした札幌で、20年以上の長きにわたり続いてきた老舗の飲み屋が52軒も紹介されている。店の幅も広く、おでん、焼き鳥、居酒屋、バーはもちろん、音楽酒場というのが一つのカテゴリーとして立てられているのが凄い。シャンソン酒場ってあるんだなあ。

 内容はもともと北海道新聞に連載されていたもののようだ。連載第一回目に紹介されたのが「おでん小春」、第二回が「BARやまざき」だったそうで、「ああ、そこから来ますか」とうならせる。名店と聞いており、店先までは足を運んだことがある。が、まだ未体験。まだ若造なもんで怖いのだ。

 恐怖心なく入れる店としては、このところの心のオアシス「金富士」はもちろん、常連面できる数少ない居酒屋「晩酌処かんろ」が紹介されていて嬉しい。

 札幌、特にススキノは店の入れ替わりが本当に激しく、また、好況不況の波がもろに押し寄せてきて、 20年間店を構え続けるというのは至難の業だろう。そんな中でもやっていられるというのは、やはり客が支え続けたからであり、客を呼び続ける魅力がその店にあるからだ。古い店にはハズレがない、というのは斯界の重鎮太田和彦氏の言。

 札幌のグルメガイドブックは山のようにあるのだが、それらはいずれも高級店ばかり。和食にイタリアン、フレンチに寿司に蕎麦。居酒屋なら、ホットペッパーに元気な若者向けの店がわんさか。それもいい。それもいいが、いい歳をしたおっさんがカウンターで独り酒をすするような店を網羅した本はいままでなかったのだ。欲しかったよ、こんな本。

 札幌だけでなく、全国の酒飲みにお勧めしたい一冊。札幌に遊びに来る際にはぜひカバンのポケットに入れておくこと。

 ところで、ネットで調べようと思っていた酒場「第三モッキリセンター」は、居酒屋の章のトップバッターに登場。なぜ「第三」なのか、第一や第二はないのか、といった疑問は読めば解ける。

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