基礎ゼミ2007反省

 本日、「基礎ゼミ」と呼ばれる演習が終わりました。これは、2年生が所属するゼミを決めるために半期でおこなわれる、言ってみれば「お試し」のゼミで、3年生が2年生をリードしていく形で進められるものです。

 ぼくは毎年この演習を担当しているのですが、今年は美馬のゆり・山内祐平『「未来の学び」をデザインする』をテキストとして用いました。この本には創設間もないはこだて未来大が取り上げられていて、カリキュラムと学習環境が、状況的学習論を背景としてどのようにデザインされているかが解説されています。

 今年の演習はこのように進めました。14回の演習を前半と後半に分け、前半では「4~6歳の子どもを対象とした、オリジナルのクイズゲームをつくろう」と題したグループ作業を行い、後半に先のテキストを読むこととしました。

 このグループワークの目標は、北大幼児園の子どもたちに15~20分間のクイズゲームをしかけ、なおかつその子たちに「ウケる」ことでした。なぜクイズゲームという素材を選んだかと言うと、就学前の子どもたちが、何を知っており何を知らないか、何ができて何ができないのか、何かをさせるためにこちら側がどのようにすればいいのか、こういったことを学生たちにとことん考えてほしいと思ったからです。基礎ゼミに参加するのは主に2年生なので、ひととおりの基礎的な知識は概説で学んでいるはずなのですが、いかんせん具体的な像として結んでいない。そこで、クイズゲームを製作し、それを子どもたちを巻き込む形で披露するという目標を作ることで、ぜひ主体的に子どもの姿から学んでほしいなと思ったわけです。

 10月にスタートしたこの作業は、12月の前半に最後の班が発表して無事終わりました。本日最後の基礎ゼミで各班に報告書を提出してもらい、すべての作業が終了したわけですが、こうしたフローをこちらで計画する際に参考としたのが、はこだて未来大のプロジェクト学習や、先に挙げたテキストに紹介されているワークショップ型の演習でした。

 基礎ゼミの後半でテキストを読んだのですが、ここで学生さんたちは、自分たちがこれまでグループで行ってきた活動の理論的背景や他の実践例を知ったわけです。

 ただ本の中のこととして受け流すのではなく、実際に目で見て肌で触れてほしい。ということで先日、はこだて未来大にも総勢10名ほどで行ってきました。せっかく同じ道内にあるのですから、行かない手はないですね。大学院の先輩で、現在はこだて未来大で講師をされている南部美砂子先生にコーディネートをお願いし、お休みのところ無理に出てきていただいて実現した見学会でした。

P1020079.jpg

 未来大の特色であるプロジェクト学習(実際のところ、特色GPをとっています)は、数名の教員がチームを組んでテーマを設定し、そこに興味ある3年生が入っていってプロジェクトを進めていくというもの。学生さんたちはおよそ1年間、結果としてのモノをきちんと作るために相当苦労するそうです。

 今回の訪問では、南部先生のはからいで、今年度のプロジェクト学習の発表会で用いられたプレゼンボードが展示されていました。北大の学生さんたちはそれなりに見入っていたようです。

P1020070.jpg

 展示会場では大学院生の水野さんが、製作された機械をもって登場。心理学の理論を背景に、具体的なモノの形に落とし込む作業について語っていただきました。また、南部先生からはプロジェクト学習を指導するにあたってのおもしろさやご苦労などをうかがいました。

P1020064.jpgP1020082.jpg

  函館には1泊。学生さんたちは部屋に集まって夜中の2時までなにやら話していたようです。ぼくはひとり街をさまよっていました。

  今回の基礎ゼミを振り返って、学生さんたちから「みんな仲良くなれたのがよかった」という感想をもらいました。

 教員を5年やっていてつくづく思うに、学生が何を学習するかはコントロール不可能です。いくらこちらが熱弁をふるっていたとしても、学生は「あの先生は熱弁をふるう人だ」ということを学習しているだけかもしれないのです。ぼくにできることは、こちらの期待する学習内容について学生が学習しやすくするための、環境作りだけだと思います。

 communities of learners、すなわち、学びあう仲間たちの基礎作りだけはできたかなあと、そう思っています。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA