FW2 14-17

dun (2005年10月 2日 00:37)|コメント(0)| トラックバック(0)

     The oaks of ald now they lie in peat yet elms leap where askes lay. Phall if you but will, rise you must: and none so soon either shall the pharce for the nunce come to a setdown secular phoenish.

 古き樫らはいま泥炭の中に眠るが、トネリコ男のいるところでニレ女が萌えいずる。転んだにしても、起きねばならぬ。そしてまだ先だがさしあたっての茶坊主劇は堅気に終わるだろう。

 The oaks ... lie in peat: 泥炭の中で保存された木のことを、bog-oakと呼ぶ。オーク、つまり樫の木でなくても、こう呼ぶようだ。日本語では、「神代」(じんだい)とか「埋もれ木」とか呼ばれるものに相当する。

 The oaks ... askes lay: この文には、ヨーロッパで聖なる木として崇められた植物、すなわちoak、alder、ash、elmが埋め込まれている。

 ald: alder(ハンノキ)、old。

 lie in peat: lie in peace(安らかに眠る)

 elms leap where askes lay: 北欧神話では、最高神オーディンが最初の人間を造ったことになっている。トネリコ(ash)からアスク(Askr)という男が、ニレ(elm)からエンブラ(Embla)という女が造られた。

 Phall ... must: この一文は、ジェイムズ・マクファーソンJames Macphersonによる詩『フィンガル』(Fingal)"の一節"If fall I must, my tomb shall rise"に基づく。
 phall: fall
 "will ... must"の対比は、自由意志に基づく非決定論と、必然性に基づく決定論の対比を表す*1。とすると、落ちるのは意志によるものだが、そこから復活するのは必然ということか。

 pharce: farce(茶番劇)

 for the nonce(さしあたって)

 the nonce come to setdown secular: secular(俗人)をcome to setdown(降ろしに来る)のだから、nonceはnuns(尼僧たち)でもあるだろう。

 phoenish: Phoenix (不死鳥、フェニックス・パークのことも指す)、finish。


*1 McHugh, R. 1980/91 Annotations to Finnegans Wake. Johns Hopkins University Press.

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FW2 11-14

dun (2005年10月 1日 00:36)|コメント(0)| トラックバック(0)

     O here here how hoth sprowled met the duskt the father of fornicationists but, (O my shining stars and body!) how hath fanespanned most high heaven the skysign of soft advertisement! But waz iz? Iseut? Ere were sewers?

 おお、ここここになんと広がる姦淫主義者たちの父が黄昏に塵と会うが、(おお、わが輝ける星と体!)至高の天空になんとのびゆく優しき告知!でもこれは何だ?イゾルデ?ほんとうに?

 McHughはこの段落全体がイザヤ書48章13節を念頭に置いているとする*1
 「ヤコブよわが召たるイスラエルよ われにきけ われは是なり われは始また終なり わが手は地のもとゐを置(すえ)わが右の手は天をのべたり 我よべば彼等はもろともに立なり」(イザヤ書48:12-13)
 ここでヤコブに呼びかけているのは神ヱホバである。

 またCampbellはここでのイズーIseut(あるいは、イゾルデIsolde)の役割に注目する*2
 彼によればイゾルデの役割は二重である。第一に、すべての者の父を誘惑し、堕落させる女性である。第二に、遺骸から新しい命を再生させる女性である(p.33)。

 how hoth: how hath(haveの直説法3人称単数現在形)、Howth。

 sprowled: sprawled(のびのびと広がる)、prowled(うろつく)。

 met: meetの過去分詞であるとともに、オランダ語のwithに相当。

 the duskt: dust(塵)、dusk(黄昏)。

 the father of fornicationists: 直訳すれば「姦淫主義者たちの父」。
 met the duskt the father...: 「塵が父と出会った」。この塵はのちにアダムとなるのだろう。

 my shining stars: 成句で"my stars!"(ああ、びっくりした!)

 fanespanned: finespun(きめ細かい)、fane(旗、風見鶏)、span(虹が空にかかる)。

 most high heaven the skysign of soft advertisement!: 珍しく普通に読める英語だが、何を指しているのか?Campbellの解釈では、ノアあるいはモーゼにとっての神の契約の証としての、天空に広がる虹である。したがってadvertisementとは神の言葉である。

 But waz iz! Iseut!: "Was ist? Isolde?(What is? Isolde)" ワグナーの『トリスタンとイゾルデ』、トリスタンの第一声。

 Ere were sewers?: are you sure?(ほんとう?)


*1 McHugh, R. 1980/91 Annotations to Finnegans Wake. Johns Hopkins University Press.
*2 Campbell, J. & Robinson, H. M. 1944/2005 A skelton key to Finnegans Wake. New World Library.

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FW2 8-11

dun (2005年9月10日 00:09)|コメント(0)| トラックバック(0)

     What chance cuddleys, what cashels aired and ventilated! What bidimetoloves sinduced by what tegotetabsolvers! What true feeling for their's hayair with what strawing voice of false jiccup!

 なんとまあいと死こい死く、なんとまあ空気入れ替え楼閣よ!汝を赦すカトリック司祭に罪たぶらかされる私を愛してプロテスタント!逆吃の藁声話す干し草毛はなんと本物くさいこと!

 chance cuddleys: chance-medley(過失致死)
 cuddleys: cuddly(抱きしめたくなるような)、cudgels(棍棒*2

 cashels aired: 成句"castles in the air"(空中楼閣)
 cashels: Cashelキャシェル。アイルランド、ティペラリ州にある街。岩山に建つ教会跡で知られる。かつてはマンスター王の居城であった。

 bedimetoloves: Bid-me-to-loves、要は、妖婦のこと。語頭にbedも見える。
 17世紀イギリス詩人ロバート・ヘリックの詩"To Anthea, who may command him Anything"の冒頭"Bid me to live"。直後に、"thy Protestant to be"とある。

 sinduced: sin(罪) + seduce(たぶらかす)

 tegotetabsolvers: tête-à-tête absolvers、ラテン語成句"ego te absolvo"(我汝を赦す)。カトリックでは司祭が信者の罪を赦すことができる
 teg: (2歳の)羊。

 bedimetoloves ... tegotetabsolvers: プロテスタントとカトリックの対比。カトリック司祭と遊女が同居してもいる。

 hayair: hay(干し草)、hair(毛)
 strawing: straw(わら)

 jiccup: hiccup(しゃっくり)。
 Jacobも見える*1。とすると、true feeling ... hayair ... strawing voice false ...は、創世記第27章のエピソードを暗示する。ヤコブは毛深い兄エサウになりすますため、山羊の毛皮をまとい、兄の声色を用いて、ほんとうの兄である感じを出した。

 上記赤字はすべて10/1に追記したもの。


*1 McHugh, R. 1980/91 Annotations to Finnegans Wake. Johns Hopkins University Press.
*2 Campbell, J. & Robinson, H. M. 1944/2005 A skelton key to Finnegans Wake. New World Library.

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FW2 6-8

dun (2005年9月 8日 00:06)|コメント(0)| トラックバック(0)

     Assiegates and boomeringstroms. Sod's brood, be me fear! Sanglorians, save! Arms apeal with larms, appalling. Killykillkilly: a toll, a toll.

 槍門徒にブーメ嵐。血にみちた同胞よ、おっそろし!血にみちた栄光よ、守らんことを!武器は涙でりんごん訴え、ひどいもの。殺ッ殺殺ッ。ゴーン、ゴーン。

 戦いはいまだ続いているが、戦死者も出ているもよう。弔鐘があちこちで鳴り響いている。

 assiegates: assegai(槍で刺す)、gate(門)
  aze gaye(槍の一種)*1

 boomeringstroms: boomerang(ブーメラン) + ring + storm + maelstroms(大混乱)

 Sod's brood: God's blood!(神かけて!)
 sod: 芝生、土(under the sod = 墓の中に)。Old Sodで「母国」*2。(10/1追記)
 brood: 同胞

 Sanglorians: sang(フランス語で「血」)、sanglot(フランス語で「すすり泣き」)*2(10/1追記)、gloria(栄光)、sangria(サングリエ)?

 apeal: appeal - p = a peal(鐘の響き)

 larms: Lärm(ドイツ語で「騒音」)、larme(フランス語で「涙」)

 apalling: 血の気を引かせるような

 a toll: toll(犠牲者、弔鐘の音)、"at all"


*1 McHugh, R. 1980/91 Annotations to Finnegans Wake. Johns Hopkins University Press.
*2 Campbell, J. & Robinson, H. M. 1944/2005 A skelton key to Finnegans Wake. New World Library.

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FW2 3-6

dun (2005年9月 4日 00:03)|コメント(0)| トラックバック(0)

     Where the Baddelaries partisans are still out to mathmaster Malachus Micgranes and the Verdons catapelting the camibalistics out of the Whoyteboyce of Hoodie Head.

 剣士と槍士はマラカス火弾をうちまかさんとなおも外に、ヴェルダンは頭巾頂の白声党から放たれる人食い弾を弩で攻める。

 この節にはやたらと武器の名が見える。どうやら前節から戦争が始まっているようだ。とすると、前節の蛙の声(Brékkek)は鬨の声でもあるだろう。
 戦っているのは誰か?前節では東ゴート族と西ゴート族の戦いだったが、本節では、どうやらカール大帝らしい。彼は現在の西欧諸国家の基礎を作った人物。

 Baddelaries: badelaire(このような名の「反り刀」があった)、battle + Aries(牡羊座。占星術では、牡羊座の支配星火星であるが、火星は戦いの神マルスの象徴でもある)
 シャルル・ボードレールCharles Baudelaire?

 partisans: partisan(ゲリラ隊員。このような名の「」があった)、artist?

 mathmaster Malachus: "Master McGrath"
 mathmaster: math + master(算数教師)
 Malachus: malchus(このような名のがあった)
 このあたり、m...m...M...Mとmの頭韻がある。
 math: アングロサクソンの言葉で、「なぎ倒す」(mow or cut down)。サンスクリットで「滅ぼす」。ヒンドゥスタニー語で「あばら屋、修道院*2。(10/1追記)

 Malachus Micgranes: ここには何人かの人名が見える。
 カール大帝のラテン語名Carolus Magnus
 Malachi Mulligan("Ulysses"の登場人物、マラカイ・マリガン)

 Micgranes: migraine(火焔瓶fire grenade*1

 Verdons: ヴァーノン家Vernon Family、クロンターフ城を代々所有してきた。
 ヴェルダンVerdun、フランス北東部の都市。ここは歴史的に重要な出来事が起きたことで知られる。
 843年 ヴェルダン条約締結(カール大帝の領土を、彼の3人の孫が3つに分割して相続することを決めた条約。これが現在のフランス、ドイツ、イタリアの国境の基礎となる)
 1916年 ヴェルダンの戦い(第一次大戦中、フランスとドイツのあいだで起きた激戦)

 catapelting: catapult(弩(いしゆみ)) + pelting(たたきつける、取るに足らない)

 camibalistics: cannibalistic(人食いの) + ballistics(弾道学)

 Whoyteboyce: Whiteboys(白衣党)。18世紀アイルランドで活動した反乱軍。

 Hoodie Head: Howth Head*1? Holy Headでは。

 Hoodie: Hooded crow(ハシボソガラス


*1 McHugh, R. 1980/91 Annotations to Finnegans Wake. Johns Hopkins University Press.
*2 Campbell, J. & Robinson, H. M. 1944/2005 A skelton key to Finnegans Wake. New World Library.

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FW2 1-3

dun (2005年9月 1日 00:01)|コメント(0)| トラックバック(0)

     What clashes here of wills gen wonts, oystrygods gaggin fishygods! Brékkek Kékkek Kékkek Kékkek! Kóax Kóax Kóax! Ualu Ualu Ualu! Quáouauh!

 意と非意が、貝ゴードと魚ゴードが、ここでどんなにぶつかってるか!グエケケ、ケッケケ、ケロケケ、ケケッケ!クエッ、クエッ、クエッ!ウアル、ウアル、ウアル!クアオアア!

 gen: 情報。gegen(ドイツ語で「~対~(against)」)。

 wonts: 習慣。won't = will not。

 will gen wonts: will against will not?

 oystrygods: oyster + gods(牡蠣の神々)、Ostrogoth(東ゴート族

 gagin: gagging(吐き気でげっとなる)、gegen

 fishygods: fishy + gods(魚くさい神々)、Visigoth(西ゴート族)

 oystrygods gaggin fishygods: 東ゴート族と西ゴート族が対峙した大きな戦いと言えば、西暦451年に起きたカタラウヌムの戦いである*1

 Brékkek ... Kóax!: アリストファネスの喜劇『』に登場する、冥界にいるカエルのコーラス。Brekekekex Koax Koaxと鳴く。

 Ualu ... Quáouauh!: ウェールズ語の、追悼の泣き声*2。(10/1追記)


*1 McHugh, R. 1980/91 Annotations to Finnegans Wake. Johns Hopkins University Press.
*2 Campbell, J. & Robinson, H. M. 1944/2005 A skelton key to Finnegans Wake. New World Library.

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FW1 22-24

dun (2005年8月31日 23:33)|コメント(0)| トラックバック(0)

     and their upturnpikepointandplace is at the knock out in the park where oranges have been laid to rust upon the green since devlinsfirst loved livvy.

 そいつがひっくり返った地点場は公園でぶっ倒れたところ、デブリン人が最初にリヴィに恋して以来、オレンジが緑を錆びつかせようと覆いかぶさっていたところ。

 upturnpikepointandplace: upturn(ひっくり返す) + pike(槍、尖った山、カワカマス) + point and place
 turnpike(有料道路)も見える。ダブリンの西、フェニックス・パークのあるあたりがチャペリゾッド(Chapelizod)だが、そこにturnpike roadがあった。

 knock: キャッスルノック(Castleknock)。フェニックス・パーク西側にある地名、公園入口がある

 Orange ... Green: アイルランド国旗は白をオレンジと緑とではさんだ三色旗である。オレンジはプロテスタントを、緑はカトリックを、それぞれ象徴する。
 バスク地方で「オレンジ」を表す言葉の語源は、「最初に食べられた果実」(アダムとイブが食べたもの)*1

 rust: 錆、オランダ語で「休眠(rest)」

 devlinsfirst: Dublin + first、devil + firstも?オレンジがイブの果実を象徴するなら、「devil first loved Liffey(悪魔が最初に愛したリフィ)」と読める?

 livvy: Liffey川。FWでは川は女性原理の象徴となる。


*1 McHugh, R. 1980/91 Annotations to Finnegans Wake. Johns Hopkins University Press.

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FW1 18-21

dun (2005年8月28日 23:31)|コメント(0)| トラックバック(0)

     The great fall of the offwall entailed at such short notice the pftjschute of Finnegan, erse solid man, that the humptyhillhead of humself prumptly sends an unquiring one well to the west in quest of his tumptytumtoes:

 塗り壁の崩落はあっと言う間にしっかりした奴フィネガンのつつーい落を引き起こし、そのこぶ丘頭がずんぐり足っちょを探しにずいぶん西へと探し物好きを送り込む。

 前の1文から、転落のモチーフが続く。ここでようやく、本のタイトルにあるフィネガンの名が出てきた。

 彼はアイルランド民謡'Finnegan's Wake'に登場するレンガ職人ティム・フィネガン(Tim Finnegan)。ヨーロッパには、アイルランド人はみな酒好きというステレオタイプがあるが、彼も噂に違わず酒が好き。ある日酔っぱらってハシゴに登ったため、そこから落っこちて、頭をかち割ってしまう。
 死んだと思った知り合いは、ティムを囲んで通夜騒ぎ。アイルランドの通夜(Wake)では集まった人で酒を飲み、死体を囲んで賑やかに宴会をする。ある人が飲んでいた酒をあやまってティム・フィネガンにこぼしてしまう。するとティムさん飛び上がり、「やあ、死んだと思ったんかあ!」
 Joyceは、この歌から「死と再生」のモチーフを借りて、FWの中に溶かし込んだ。民謡のタイトルからアポストロフィを取り去ることで、たった一人の死と再生ではなく、あらゆるフィネガンたち(Huckleberry Finnや、Fin MacCoolなどのFinnたちも含めて)の死と再生の物語へと回路を開いたのである。

 offwall: off the wall(奇妙な)、Wall Streetの外(Off Broadwayと似たようなもの)?

 entail: イギリスの法律用語で「限嗣相続財産」。en(~にする) + tail(尾)、「結果として~という状態にする」といった意味か。

 at such short notice: 強調のsuch + at short notice(急いで)

 pftjschute: pftjs + chute(フランス語で「落下」)。フィネガンの転落する擬音。

 erse: Erse「(スコットランド系の)ケルト族の」。

 solid man: アイルランド民謡、'The Solid Man'。ミュージック・ホール歌手William J. Ashcroftによって一般に広められた*1

 humself: himself、hum(ブツブツ言う、鼻歌を歌う)。

 prumptly: promptly(急いで)、plump(まるまる太った、ドスンと落ちる)。

 humptyhillhead ... tumptytumtoes: hとtの頭韻。
 head(頭)とtoes(つまさき)が見えるが、これはダブリンの地下にまどろんで横たわると言われる英雄フィン・マクールFinn MacCoolのもの。ホウス岬がその頭だとする伝説がある。頭をホウス岬とすると、足先はダブリンの西にあるフェニックス・パークPhoenix Park)にあたる*1。この公園の名の由来は、アイルランド語の"Fionn Uisce"(透明な水)。園内に泉があったことから。ということは、wellには「井戸」の意味もあるか。
 Humpty Dumptyも見える。民謡ではティム・フィネガンがハシゴから落ちたが、ここの1文ではマザーグースに出てくるハンプティ・ダンプティが、塀の上から落下する。
 humpy(こぶだらけの)、dumpy(ずんぐりした)。

 unquiring: enquiring(取り調べ) 。

 in quest: inquest(査問)、in quest of(~を探して)。


*1 McHugh, R. 1980/91 Annotations to Finnegans Wake. Johns Hopkins University Press.

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FW1 15-18

dun (2005年8月27日 23:29)|コメント(0)| トラックバック(0)

     The fall (bababadalgharaghtakamminarronnkonnbronntonnerronntuonn- thunntrovarrhounawnskawntoohoohoorderenthurnuk!) of a once wallstrait oldparr is retaled early in bed and later on life down through all christian minstrelsy.

 転落(バババダルガラタカミナロンコンブロントンネロンタントントロヴァロウンアウンスカントゥーフーフールデレントゥルヌック!)、かつてウォール街の老人の話は、クリスチャン吟遊詩人たちによって、初期にはベッドで、やがて巷間に語り継がれていく。

 bababa...以下、ちょうど100文字あるこの単語は、もちろん転落したときの擬音だが、雷鳴を表すともいわれる。ここには各国語で「カミナリ」の意味をもつ単語がちりばめられている。以下、McHughの注釈に載せられているものを挙げていく。

 bababa...: Babel?
 ...kamminarronn...: kaminari 日本語
 ...konn...: karak、ヒンドゥスタニー語
 ...bronn...: brontao、ギリシャ語
 ...tonnerronn...: tonnerre、フランス語
 ...tuonn...: tuono、イタリア語
 ...thunn...: tun、古ルーマニア語
 ...trovarr...: trovao、ポルトガル語
 ...awnskawn...: aska、スウェーデン語
 ...toohoohoorderen...: tordenen、デンマーク語
 ...thurnuk: tornach、アイルランド語

 wallstrait: ウォール街(Wall Street)。ウォール街で転落といえば、1929年の暗黒の木曜日のことだろう。
 well-straight(まっすぐ)も見える。まっさかさまに「転落」したのだろう。

 Old Parr: 今ではスコッチウィスキーの名前で知られるが、これはもともと、152歳まで生きたというイギリス生まれの人物、Thomas Parrのこと。
 parr: サケ科の魚の幼魚、とするならば、Oldparrは「老幼魚」。「昨日生まれた婆ちゃんが...」のようなもの。
 フランス語でpere(父)も見える。

 retaled: re + tale(ふたたび物語る)。次の一文にentailedがある。taleとtailの語呂合わせは、『不思議の国のアリス』にも出てくる有名なもの。

 early in bed and later on life: 成句"Early to bed and early to rise"(早寝早起き)。

 christian minstrelsy: 字義通りに読めば、クリスチャン吟遊詩人。同時に、フォスターの時代、19世紀前半のアメリカで人気を博したミンストレル・グループChristy's Minstrels
 ministryもあるか*1


*1 McHugh, R. 1980/91 Annotations to Finnegans Wake. Johns Hopkins University Press.

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FW1 12-14

dun (2005年8月23日 23:01)|コメント(0)| トラックバック(0)

     Rot a peck of pa's malt had Jhem or Shen brewed by arclight and rory end to the regginbrow was to be seen ringsome on the aquaface.

 ジェムかシェンがアーク光のもとでパパのモルトをたっぷり腐らせ醸造し終えると、真っ赤な虹が水面に円く見えようとしていた。

 a peck of ... malt: "O, Willie brew'd a peck o'maut"という歌*1

 Jhem or Shen: Jameson
 Shen: shen(中国語の「神」)*1

 brewed: ウィスキーは醸造しない(distillする)。醸造するのはビールだ。ここにはJamesonと並んで知られるアイルランドの酒工場、Guinness breweryが入っていると言うが*1

 arclight: アーク灯。この文の後半にrainbowが見えるので、arc(弧) + light(光)。

 rory: アイルランド語で「紅(red)」*2。roridus(ラテン語で「露でじっとりした」)*1

 rory end to the ... :アングロアイリッシュの言葉で、bloody end to the lieは、no lie(本当だよ)*1

 rory end to the regginbrow: At the rainbow's end are dew and the colour red*2

 regginbrow: Regenbogen(ドイツ語で「虹」)*1、rainbow

 ringsome: ringsum(ドイツ語で「囲んで」around)*1

 この1文には、創世記第9章のイメージがかぶせられている。Joyceはここに関連して、"When all vegetation is covered  by the flood there are now eyebrows on the face of the Waterworld"と書いている。水の世界の顔に眉?水面に映った虹のメタファであろうか。
 ノアは洪水がひいた後、葡萄を作ってワインを醸造(brew)する。
「爰にノア農夫となりて葡萄園を植ることを始しが 葡萄酒を飲て醉天幕の中にありて裸になれり」(創世記第9章20節~21節)
 arclightにはArk(ノアの方舟)が見える。
 rainbowは、神とノアとの契約の証でもある。
「神言たまひけるは我が我と汝等および汝等と偕なる諸の生物のあいだに世々限りなく爲す所の契約の徴は是なり 我わが虹を雲の中に起さん是我と世とのあいだの契約の徴なるべし」(創世記第9章13節~14節)
 aquafaceは洪水の水面でもある。


*1 McHugh, R. 1980/91 Annotations to Finnegans Wake. Johns Hopkins University Press.
*2 Ellman, R. (Ed.) 1976 Selected letters of James Joyce. Faber and Faber. pp.316-7

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FW1 11-12

dun (2005年8月22日 22:53)|コメント(0)| トラックバック(0)

     not yet, though all's fair in vanessy, were sosie sesthers wroth with twone nathandjoe.

 ヴァネッサにしたらなんでもありだが、双子姉妹が二人で一人ジョナサンに怒り狂ったのもまだのこと。

 all's fair in ... : All's fair in love and war.(ことわざで、「恋と戦は手段選ばず」)。

 fair in vanessy: ウィリアム・サッカレー"Vanity Fair"(『虚栄の市』)*1

 vanessy: Vanessa(後述)

 sosie: フランス語で「瓜二つの人間」、saucy(生意気な)

 sesthers: sisters(姉妹)
 また、ここにはEstherも読める。これは、ジョナサン・スウィフトをめぐる二人の女性、エスター・ジョンソン(Ester Johnson、愛称ステラStella)とへスター・ヴァナミリー(Hester Vanhomrigh、愛称ヴァネッサVanessa)を指す。

 twone: two-one 「二人で一人」の意味ならば、エスターの名を介してステラとヴァネッサが一人であること、「一人で二人」の意味ならば、一人のスウィフトが二股かけることだろう。

 nathandjoe: スウィフトのファーストネーム、Jonathanの転倒。スウィフトの名前を使ったこうした遊びはヴァネッサもしていたようだ*1


*1 McHugh, R. 1980/91 Annotations to Finnegans Wake. Johns Hopkins University Press.

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FW1 10-11

dun (2005年8月20日 22:52)|コメント(0)| トラックバック(0)

     not yet, though venissoon after, had a kidscad buttended a bland old isaac:

 小憎が老盲凡アイザックを突っつきだましたのも、もうすぐあとだが、まだのこと。

 この一節について、Joyceはこうメモしている。
 The venison purveyor Jacob got the blessing meant for Esau*2
 鹿肉を調達してきたヤコブが、エサウに与えられるはずの祝福を得た。
 これは、創世記第27章のエピソードである。アブラハムの息子イサクとその妻リベカには、エサウとヤコブという双子の兄弟がいた。年老いて目も見えなくなったイサクは、父アブラハムから受け継いだ神の祝福を受ける権利(すなわち、族長の地位)を長子エサウに渡そうとしていた。鹿肉で作った料理を食べさせてくれればその権利を渡そうと約束し、エサウは勇んで狩りに出かけた。
 ところが妻リベカは弟ヤコブにその権利を与えたかったため、一計を案じた。

「而してリベカ家の中に己の所にある長子エサウの美服をとりて之を季子ヤコブに衣せ 又山羊の羔の皮をもて其手と其頸の滑澤なる處とを掩ひ 其製りたる美味とパンを子ヤコブの手にわたせり 彼乃ち父の許にいたりて我父よといひければ我此にありわが子よ汝は誰なると曰ふ ヤコブ父にいひけるは我は汝の長子エサウなり我汝が我に命じたるごとくなせり請ふ起て坐しわが鹿の肉をくらひて汝の心に我を祝せよ」(文語訳聖書 創世記 第27章15節~19節)

 したがって、以下のように読める。
 venissoon: venison(鹿肉) + son(息子)
 kidscad: kids(子ヤギ) + cad(卑劣なヤツ)。McHughはkidscadにtrickを読んでいるが?
 a bland old isaac: a blind old Isaac(盲目老人イサク

 同時に、この一節は19世紀のアイルランド独立運動の文脈で読むこともできる。
 まず、old isaacとはアイザック・バット(Isaac Butt)のこと。そう言えば、buttendedが見える。
 バットは、アイルランド自治を訴えた自治連盟(Home Rule League)の創設者。
 彼に代わって二代目リーダーとなったのがチャールズ・スチュワート・パーネル(Charles Stewart Parnell)。彼の子どもの頃のあだ名がButthead(頑固者)*1。バットを追い出したからbutt-endということでもある。

 venisoon: very soon*1

 buttended: buttendには「バットの先で突く」という意味もあるらしい。


*1 McHugh, R. 1980/91 Annotations to Finnegans Wake. Johns Hopkins University Press.
*2 Ellman, R. (Ed.) 1976 Selected letters of James Joyce. Faber and Faber. pp.316-7

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FW1 9-10

dun (2005年8月20日 22:50)|コメント(0)| トラックバック(0)

     nor avoice from afire bellowsed mishe mishe to tauftauf thuartpeatrick:

 遠くの炎より声が、泥炭洗礼ペトリックに、我へ我へモーセと鳴りひびいたのもまだ。

 この一節についてJoyceはこう説明している*2
 "The flame of Christianity kindled by St Patrick on Holy Saturday in defiance of royal orders"
 「王の命令に抵抗して、聖土曜日に聖パトリックがキリスト教信仰の炎をあげた」。
 これは以下の逸話を指すと思われる。「ターラの丘で諸王が集う祭りの日には王宮に灯りがつくまで何人も火を焚いてはならないという決まりごとがあった。セント・パトリックはこの掟を破ってターラの丘の向かいにあるスレーンの丘で火を焚いた。これに怒った王は彼を殺そうとしたのだが、次々と奇跡が起こった。彼が焚いた火は消そうとしても消えず、ドルイドとの対決にも勝った。恐れた王たちはついにキリスト教に改宗したのだそうだ」(海老島均・山下理恵子(編著) アイルランドを知るための60章 明石書店 p.173)。(9/4追加)
 聖パトリックによるアイルランドへのキリスト教の布教がモチーフとなっている。キリスト教と聖書はFWの背後に常に見え隠れする要素だ。

 avoice: a+voice、avoid?

 afire: a+fire、from afar(遠くに)

 bellowsed:
 bellows(ふいご)。火をおこす道具であるが、アコーディオンやパイプなど共鳴楽器に風を送り込む装置でもある。
 bellow(どなる、とどろく)。Joyceは何がbellowしたのかについて、以下のように注釈を加えた*2。"the response of the peatfire of faith to the windy words of the apostle "。伝道者の虚言に対する、信仰の熾き火による応答、ということか。

 mishe mishe: mise(アイルランド語で「私をme」)。

 tauftauf: turf(泥炭)、taufen(ドイツ語で「洗礼baptise(pdf)」)。

 thuartpeatrick: "Thou art Peter and upon this rock etc"を1語に圧縮。
 thou artは古い英語でyou are。引用したのは新約聖書マタイ福音書16章18節の、イエスの言葉である。ラテン語で"Tu es Petrus et super hanc petram aedificabo Ecclesiam meam."「汝はペテロなり、我この磐の上に我が教會を建てん」(文語訳新約聖書より)。
 原文では、Petrus(ペテロ)とpetram(岩)の語呂合わせがなされている。ペテロはイエスの12使徒のひとりであり、カトリック初代教皇。

 thuartpeatrick: 聖パトリックSaint Patrick。アイルランドの守護聖人で、彼の地へキリスト教を伝道したことで知られる。

 fire ... bellows ... taufと、炎のイメージが続くが、thuartpeatrickにはpeat(泥炭)が見える。ということは、mishe misheにはmoss(こけ)もひびくか。
 McHughはmishe misheにMoses, Moses(モーゼ)を読み取る*1。というのも、モーゼにとってburning bush(燃えても燃え尽きぬ柴)は神の隠喩であり、アイルランド人にとって燃える柴とはすなわち泥炭にほかならないから。


*1 McHugh, R. 1980/91 Annotations to Finnegans Wake. Johns Hopkins University Press.
*2 Ellman, R. (Ed.) 1976 Selected letters of James Joyce. Faber and Faber. pp.316-7

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FW1 6-9

dun (2005年8月15日 22:47)|コメント(0)| トラックバック(0)

     nor had topsawyer's rocks by the stream Oconee exaggerated themselse to Laurens County's gorgios whole they went doublin their mumper all the time:

 オコネー川の流れに臨むトップソーヤー岩が積み上がり、ローレンス州のジプシーでない人々がいつもジプシーを倍々にしたのもすでに先のこと。

 この節について、Joyceは次のメモを残している*2
 Dublin, Laurens Co, Geogia, founded by a Dubliner, Peter Sawyer, on r. Oconee. Its motto: doubling all the time
 アメリカ合衆国、ジョージア州Georgiaローレンス郡Laurens Countyにはダブリンという街がある。ジョイスは、この街の創始者をPeter Sawyerとしているが、こちらではJonathan Sawyerだとされている。Oconeeもアイルランド起源の名だろう。
 前節とのつながりから言えば、海を渡る人々はついに北アメリカNorth Armoricaに到達、生まれ故郷の名をその地に残した。Laurensは、Sir Tristramの別名でもある。

 topsawyer's rock: オコネー河岸の地層*1。オーストラリアのエアーズロックAyer's Rockを読み込む向きもあるが、どうだろう?
 top sawyer: 通常の意味では、「上役」「木挽きsawyerの棟梁top」。しかし、トウェインの書いたトム・ソーヤTom Sawyerでもある。その友だちはおなじみHuckleberry Finn。彼もFinn-egansのひとりだ。
 rocks: 複数形で「睾丸」。身体のレベルで読めば、topは「頭」を指す。

 exaggerare: ラテン語で、「土手を築くことto mound up」*1

 themselse: them+else他の彼ら、themselves彼ら自身。自分自身でありつつ他の誰かでもある。Joyceは"themselse= another Dublin 5000 inhabitants"*2とメモを残している。つまり、もうひとつのダブリンに住む別の人々のことでもあるだろう。

 mumper: 俗語で、「混血のジプシー」。*1

 doublin: Dublin、倍増doubling、babbling?

 gorgios: 華麗なgorgeous、ジョージア州Georgia。Laurens County's Georgiaと、行政レベルが逆転している。
 gorgo: イタリア語で、「渦巻き、混乱、騒ぎ」。*1
 gorgio: ジプシーのことばで、「非ジプシー」。*1


*1 McHugh, R. 1980/91 Annotations to Finnegans Wake. Johns Hopkins University Press.
*2 Ellman, R. (Ed.) 1976 Selected letters of James Joyce. Faber and Faber. pp.316-7

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こんなサイトが

dun (2005年8月14日 22:46)|コメント(0)| トラックバック(0)

 検索サイトで調べものをしていると、多くの場合、検索結果の上位にWikipediaの項目が引っかかってくる。

 詳しいし、便利なので、リンクを張りたい衝動に駆られるのだが、なんだか負けたような気がして、なるべくそれはしないようにしている。読みにとって、語の定義や百科辞典的知識が重要なのではなく、連想が重要だからだ。

 そんななか、こんなサイトを発見してしまった。

 Finnegans Wiki

 うひー。便利な世の中になったものだ。

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FW1 4-6

dun (2005年8月14日 22:44)|コメント(0)| トラックバック(0)

     Sir Tristram, violer d'amores, fr'over the shot sea, had passencore rearrived from North Armorica on this side the scraggy isthmus of Europe Minor to wielderfight his penisolate war:

 Sir Tristram...had passencore rearrived from North Armorica on this side the scraggy isthmus of Europe Minor to wielderfight his panisolate war: トリストラム伯爵が、半島戦争を支配すべく闘うために、北アルモリカからこちらがわヨーロッパ・マイナーのごつごつした地峡へ、ふたたびやって来たのはまだ先のこと。

 Sir Tristram: サー・アモリー・トリストラムSir Amory Tristramは初代のホウス城伯爵。アルモリカの北、すなわちブルターニュ地方に生まれ、後に聖ローレンスと名前を変えた。
 トリストラムはトリスタン(pdf)も連想させる。ワーグナーの歌劇で知られる、トリスタン物語の主人公。彼はブルターニュで育ち、コーンウォールに戻る。その後叔父マルケ王(King Mark)の妻となるべきイゾルデを迎えにアイルランドへおもむく。
 この一節は、海を越える人々のモチーフ。

 violer d'amores: viola d'amoreヴィオラ・ダモーレ。7本の弦がはられた擦弦楽器。
 violer: フランス語で「侵犯するviolate」*1
 d'amore: イタリア語で、「愛のof love」。

 fr'over the shot sea:
 shot sea: short sea。航海用語で、「短距離海路」。たとえば、short sea shippingは「短距離水上交通」。
 short seaは「不規則に波打つ海面」という意味でもあるようだ。また、上に書いた「short sea = 短距離海路」はちょっと怪しくなってきた(8/16追加)。

 passencore: pas encore(フランス語で、not yet「まだ~しない」)
 passencore: "pas encore and ricorsi storici of Vico"*2 ricorsi storici(ヴィーコの歴史循環説との関連)
 had ... rearrivedとpassencoreは矛盾する。すでに起きたことが、これからもう一度起こるという歴史の循環。

 North Armorica: アルモリカはフランス北西部、ブルターニュあたりの古い名。同時に、North Americaも指す。

 Europe Minor: 小アジアAsia Minorではなく、「小ヨーロッパ」。小アジアは、現在言うところの、ボスポラス海峡を挟んだトルコの東側、アジアの西端。したがって、ヨーロッパの西端、ブルターニュ、ブリテン、アイルランドあたりを指すものと思われる。

 isthmus: Isthmus of Sutton*2。サットンとは、ホウス岬の付け根にあるあたり

 weilderfight: 振りかざすwield+闘うfight。
 wiederfichten ドイツ語で、「再戦refight」*1

 penisolate war: ナポレオンの起こしたイベリア半島戦争のこと。この半島は、同時に、トリストラム伯のいるホウス岬や、トリスタンのいるコーンウォールも示す。
 penisolate: ペンpen+孤立したisolate。孤独にペンを走らせる戦い。ジョイス自身の像かも。

 この節全体が、いくつかのレベルで読める。上に書いたのは地誌的、歴史的、神話的レベルでの読みであるが、viola d'amoreで音楽のイメージが沸くと、Minorは「短調」の意味にとれる。また、セクシャルなレベルは常に考えておかねばならないから、penisolate warにペニスの戦いを見て取ることもできる。


*1 McHugh, R. 1980/91 Annotations to Finnegans Wake. Johns Hopkins University Press.
*2 Ellman, R. (Ed.) 1976 Selected letters of James Joyce. Faber and Faber. p.317.

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FW1 1-3

dun (2005年8月12日 21:50)|コメント(0)| トラックバック(0)

     riverrun, past Eve and Adam's, from swerve of shore to bend of bay, brings us by a commodius vicus of recirculation back to Howth Castle and Environs.(FW 1)

 riverrun: riverain(川辺)、riveran(イタリア方言で、「到着するだろう」)*1

 riverrun: 見た目は、riverとrunの合成。OEDには、nonce-word、つまり1回しか使われなかった語として登録されている。意味は、"The course which a river shapes and follows through the landscape. " これはそのまま、FW冒頭のこのパラグラフがもたらす読みの1つのレベル、すなわちダブリン周辺の地誌を示す。とすると、riverはリフィー川を指す。
 がしかし、あらゆる「流れるもの」の象徴と捉えておきたい。川の流れはもちろん、人類の起源から現在にいたるまでの歴史の流れ、人間のボディラインの流線型、そこから流れ出るあらゆる体液の象徴でもあるだろう。

 Eve and Adam's: ダブリン、リフィー川岸マーチャント・キーMerchant Quayにあるカトリック教会Adam and Eve's。名の由来は、かつて教会に入っていたパブ(public house)。なぜ教会にパブが?リンク先の案内によると、どうやら法律(the Penal Law)でカトリック礼拝が禁止されていた頃に、建物がパブとして利用されていたらしい。
 もちろん、聖書での最初の人類、アダムとイブも指す。しかしFWではイブとアダム、騎乗位になっている。

 from swerve of shore to bend of bay: 岸shoreの曲がりswerveから湾bayの曲がりbendへ。sとbの頭韻にしたがって語が選ばれている。

 by a commodius vicus of recirculation: 再循環するa commodius vicusにそって

 commodius: commodious(広い)に、ローマ皇帝コンモドゥスがかけてある。

 vicus: 地誌的にはドーキーにあるVico Road、同時にイタリアの思想家ヴィーコVicoも指す。ヴィーコの歴史循環説は、FWを支える思想的屋台骨でもある。「この本は全体がイタリア人思想家...の理論の上に成り立っているのですから」*2。これは、1940年1月9日付のジョイスの手紙の一節だが、「この本」とはFWを指し、「...」にはヴィーコが入る、とEllmanは言う。

 vicus: ラテン語で「路、村」。vicus of recirculationは、vicious circle(悪循環)*1

 brings us ... back to Howth Castle and Environs: ホウス城周辺へとわれわれを連れ戻す。

 Howth Castle: ダブリンの北東に位置するホウス岬に建つ城。

 Howth Castle and Environs: なぜEが大文字に?HCEを強調するため。HCEとはFWの主人公、Humphrey Chimpden Earwickerのイニシャル。これは同時に、Here Comes Everybodyの略。つまりは、この世に来るすべての者のこと。


*1 McHugh, R. 1980/91 Annotations to Finnegans Wake. Johns Hopkins University Press.
*2 Ellman, R. (Ed.) 1976 Selected letters of James Joyce. Faber and Faber. p.403.

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