ヴィゴツキーの心理学理論や発達理論は今から90年ほど前に構想されたものでありながら、現在でもなお輝きを失わずに注目を集め続けています。では、現代の日本社会においてヴィゴツキー理論を読み、理解することにはどのような意義があるのでしょうか。
このことについて、彼の理論を精読し、翻訳を世に問い続けている3人の研究者から提供いただく話題を通して考えるオンラインシンポジウムを企画いたしました。多くの方のご参加をお待ちしております。
登壇者(敬称略)
佐藤公治 「ヴィゴツキーの三つの「時間」(系統発生・文化=歴史的変化・個体発生)を考える―「重層的発達論」あるいは「人間心理の歴史性」―」
ここでは、ヴィゴツキーの発達についての三つの時間、系統発生・文化=歴史的変化・個体発生に注目します。それはロシアの比較心理学で論じられていたヴァグネルらの比較心理学・動物心理学からの発達研究に源流があります。ヴィゴツキーとルリヤは人間精神と発達の問題として『人間行動の発達過程-猿・原始人・子ども-』(神谷・伊藤訳の『猿・自然人・子ども-労働と言語の歴史主義心理学』)と『認識の史的発達』で議論しています。特に後者では人間の精神活動とその発達を具体のレベルで論じたものですが、そこでは「具体の中の歴史」と「歴史の中での具体」があります。人間精神を具体のレベルとその歴史性について考えてみます(当日はPPTを使って補足します)。
伊藤美和子「ヴィゴツキー心理学の胎動期― 苦悩の克服と方法―」
10代から20代初めのヴィゴツキーにとってユダヤ人問題は死活問題であり、彼はユダヤ人に降りかかる厄災の意味を真摯に探求していた。「自由」と「悲劇」をキーワードに、1910年代に書かれた私的なメモ書き及びドストエフスキー論を中心に、ユダヤ人問題がヴィゴツキーの心理学研究とその後の展開にどのような影響を与えたのかを読み解く。
神谷栄司 「ヴィゴツキー(1896-1934)をどのように読む(研究する)のか―1 縦への連関と横への連関、2「知と情」の統一的把握、3 使用言語、そして、わたし自身の反省―」
「人格発達の壮麗な絵画:自由への道。マルクス主義心理学のなかにスピノザ主義を甦らせること」(1932年頃のヴィゴツキーのメモ書き)。これらの句の前には“知覚と感情”、“概念と感情”、“自閉的思考と感情の統合失調症的崩壊”などと書かれている。ここで述べられているマルクス主義心理学はヴィゴツキーのどの著作が典型であるのか、スピノザ主義を甦らせるとはどういう意味なのか、人格発達が自由への道であるとは何を意味するのか。これらを念頭におきながら、テーマについて話してみたい。
指定討論 加藤弘通
開催日時 2024年12月21日(土)13時~17時
開催方式 オンライン
参加費 無料
参加希望の方は下のURLよりフォームにてお申し込み下さい。
zoomに接続するリンクをメールにて追ってお送りします。
なお、本シンポジウムは後日の配信はいたしませんのであしからずご了承ください。
申し込み締め切り:2024年12月18日(水)
https://forms.gle/aJhDYP7vtKj5DD2t8
主催 日本発達心理学会北海道地区懇話会