ゼミ活動

研究会「「家庭」をフィールドとして研究するということ」開催のお知らせ

標記の研究会についてご案内いたします。

1. 企画趣旨
 近年、家庭での家族の生活を観察し、その実態について具体的に明らかにする研究が増えつつある(例えば、是永・富田(編), 2021; Korenaga et al., 2021; Ochs & Kremer-Sadlik, 2013)。また、そのための方法を検討した研究も現れ始めている(金南ら, 2021; Lareau & Rao, 2020)。こうした潮流は今後も続くだろう。
 家庭はプライベートな空間であることから、そこに研究者が入り込み、観察することが避けられてきたのは事実であろう。しかし、研究の目的によっては家庭内の観察を実施することが不可欠な場合もある。それはどのような目的か。また、家庭内に参与する際の具体的な方法とは何か。
 本企画は家庭というフィールドの観察を行った研究者から話を聞く。それを通して、これまで極めて重要でありながら顧みられることがなかった家庭というフィールドへのアプローチの仕方が明らかになることが期待される。さらに、そこでの観察を通して明らかになった重要な発見についても議論される。
 さらに、調査に協力した家族にもご登壇いただく。研究者が企画した研究に協力者として参加するということはどのような経験なのか。研究者からの一方的な見え方だけでなく、協力者からの研究者の見え方も同時に示すことにより、共同的な知の構築が期待される。

2. 話題提供(五十音順,敬称略)
鵜川貴子(公立中学校)
鵜川 護(香川大学教育学部附属高松小学校)
是永 論(立教大学)
志田未来(日本女子大学)
富田晃夫(株式会社ミサワホーム総合研究所)
伊藤 崇(北海道大学)
なお、志田未来氏のご報告は事前に撮影された動画で行われます。

3. 開催日時
 2022年10月9日(日) 13時~17時

4. 会場
 北海道大学 人文・社会科学総合教育研究棟 W410 (北海道札幌市北区北10条西7丁目)
 アクセスはこちら

5. 参加方法
 参加を希望される方は、必ず申込フォームよりお申し込みください。お申し込みをされた方に、詳細についてご案内いたします。
 本研究会は、話題提供者が提示するデータの性質上、オンラインでの公開は予定しておりませんので、あしからずご了承ください。新型コロナウィルス感染防止のため、参加人数に上限を設ける場合があります。お早めのお申し込みをお願いいたします。

6. 報告概要(発表順)
「幼児・児童の家庭内での電子デバイス使用実態調査:経過報告と調査協力者との対話」
伊藤 崇(北海道大学大学院教育学研究院)
 幼児や児童によるパソコンやスマホ、ゲームなど電子デバイスの使用状況については、多くの調査では保護者に対する聞き取りや質問紙を通して検討されてきた。それに対して本調査では、幼児や児童のいる家庭にビデオカメラを渡し、撮影してもらった映像から使用実態を明らかにすることを目的としている。本報告では現時点で明らかになったことを示す。

鵜川貴子(公立中学校)・鵜川 護(香川大学教育学部附属高松小学校)
 本研究の調査協力を通して、次のことをお伝えできればと思います。①調査研究協力への心構えと事後感想、②家庭(小学生)での電子デバイス使用の実態、③勤務校による小中学生の実態、④子どもの電子デバイス使用と保護者の監視の実態、⑤15年前からの子どもの言葉の変容、⑥香川県ネット・ゲーム依存症対策条例について等、肌感覚でのお話が中心になるかと思います。

「家庭をフィールドワークする――調査における紆余曲折――」(動画による報告)
志田未来(日本女子大学)
 報告前半では、共同研究として取り組んできた家庭におけるフィールドワークについて、どのように調査を行ったのか、その具体的な手続きや得られた知見について紹介する。後半では、個人研究に基づいて、「家庭の困難」にどうアクセスしようとしたのか等報告する。全体を通じて、方法論的手続きとして文書化しにくいような、調査中の困難、悩み、苦心したことなど紆余曲折した経験を織り交ぜながら報告させていただきたい。

「フィールドとしての家庭そして子ども:「当事者」への視点から」
是永 論(立教大学社会学部)
 本報告では、観察の対象となる行為の理解について、理論を前提とせずに「当事者」による活動(実践)そのものに視点をおくエスノメソドロジー(EM)の立場から、特定の(少数の)家庭で観察を行うことの意味について考える。このとき、行為の理解に関わる「規範」を観察上の焦点とするEMの特徴から、子どもをフィールドにした観察が、研究対象としての意味以外に、家庭の当事者自身にとっても意味を持つ可能性を、研究例を交えて示していきたい。

富田晃夫(株式会社ミサワホーム総合研究所)
 住まいをデザインするということは、対話の機会をデザインすることとある意味同じである。対話は様々な成長を促すが、対話には正解がない。家庭の中でどのような場面で、どんな対話が行われるかを知ることで、生活の意義や様々な空間デザインのヒントが得られると考え、自らデザインした空間で自らの家族の観察をすることにした。今回は、そこまでに至った経緯と、そこで生活行為を行い、客観的に観察することの意味を紹介したい。

7. お問い合わせ先
 伊藤 崇(北海道大学大学院教育学研究院) tito @ edu.hokudai.ac.jp

主催 北海道大学大学院教育学研究院言語発達論研究室
共催 日本発達心理学会北海道地区懇話会・北海道大学大学院教育学研究院附属子ども発達臨床研究センター
 本研究会は、科学研究費補助金 挑戦的研究(萌芽)課題番号20K20796「子どもは電子マネーをどう理解するか:超スマート社会での幼児・児童の生活実態の解明」の支援を受けて開催されます。

Lareau & Rao (2020)をゼミで読んでみた

2021年度前期,言語発達論の学部ゼミ(正式には,専門演習Ib/III)では,次の本を輪読しました。

Danby, S., Fleer, M., Davidson, C., & Hatzigianni, M. (Eds.) (2018). Digital childhood: Technologies and children’s everyday lives. Springer.

ゲーム機をはじめとして,現代の子どもたちの周囲にはデジタル機器があふれています。それは日本に限らず,世界的な現象です。さらに,家庭内でのデジタル機器利用に加え,現在は学校でのICT活用が推進されています。

私たち言語発達論ゼミでは,こうした状況を踏まえ,次の問いに迫るプロジェクトを展開しています。
①デジタルテクノロジーの普及した社会における子どもたちの発達をどのように理解すれば良いのか。
②子どもたちはデジタルテクノロジーをどのように理解しているのか。

上記の2つの問いに答るため,伊藤を代表とする科研費のプロジェクトとして,4歳から10歳のの子どもの,家庭におけるデジタルテクノロジー使用実態を明らかにする調査を行っています。

この調査を実施するにあたり,家庭内の子どもの生活を観察することが必要となるわけですが,それをどのように行えばよいのか,調査枠組みの参考とすべく,ゼミの最後に以下の論文を読みました。

Lareau, A., & Rao, A. H. (2020). Intensive family observations: A methodological guide.  Sociological Methods & Research, online first.

伊藤を含め3人で読み,レジュメよりも長い抄訳を作成してみました。著作権的にどうなるかちょっと不安な部分もありますが,ゼミ活動の成果の一つとしてご紹介したいと思います。

Lareau & Rao (2020)の抄訳

取りまとめと修正は伊藤が行いました。すべての責は伊藤にあります。ご批正をいただければ幸いです。

Hedegaard et al. (2008) Studying children: A cultural-historical approachを読む会のお知らせ(終了しました)

下記の通り読書会を開催します。

読むもの 
Hedegaard, M. & Fleer, M. with Bang, J. & Hviid, P. (2008). Studying Children: a cultural-historical approach. Maidenhead: Open University Press.

日時
2021年7月3日(土) 10:00-18:00

場所
対面参加希望の方は 北海道大学大学院教育学研究院附属子ども発達臨床研究センター C302
オンライン参加の方は ZoomのURLをお送りします

担当
1 Researching child development- an introduction @tito
2 A cultural-historical theory of children’s development @Joseph Tomasine
3 Developing a dialectic approach to researching children’s development @Satou Yasunori
4 Principles for interpreting research protocols 太田礼穂さん
5 Interpreting research protocols- the institutional perspective 岡花祈一郎さん
6 Interpreting research protocols- the child’s perspective @Satou Yasunori
7 Using digital video observations and computer technologies in a cultural-historical approach 太田礼穂さん
8 Conceptualising the environment of the child in a cultural-historical approach @Joseph Tomasine
9 Interviewing using a cultural-historical approach 宮城利佳子さん
10 Framing a questionnaire using a cultural-historical approach 天願順優さん
11 The educational experiment @tito
12 The role of the researcher @tito

Lave & Wenger (1991)読書会の案内

伊藤です。

言語発達論大学院ゼミは2021年度前期において正規の講義を開講しません。その代わりに,下記の通り読書会を開催します。

読むもの

Lave, J. & Wenger, E. (1991). Situated learning: Legitimate peripheral participation. Cambridge University Press.

佐伯胖先生による定評ある邦訳は1993年に産業図書から出版されています。

ジーン・レイヴ,エティエンヌ・ウェンガー 佐伯胖(訳)・福島真人(解説) (1993). 状況に埋め込まれた学習:正統的周辺参加 産業図書

およそ30年前に出版された,すでに古典と呼んでもよいこの本を,あえていま,原書で読む理由は,自分たち自身で理解を作り上げる作業を共同的に経験したいからです。あなたの「正統的周辺参加」「実践共同体」に関する理解は,原著者以外の誰かの理解に依存してませんか? 私自身もこころもとないところがあります。原書にちりばめられた前置詞や冠詞の使い方,先行研究の引用の仕方などに注目して,著者たちの言いたいことを自分たちで再現してみたいと思います。

実施要領は下記の通りです。

スケジュール

2021年4月5日(月)から,原則として祝日を除く毎週月曜(7月末までを予定)

時間帯

18時~20時

実施方法

Zoomによるオンライン開催。
レジュメを用意して議論するのではなく,原著をひたすら「音読」します。黙読すると気がつかなかった点も,声に出すことでわかるようになるかもしれません。だいたいひとつのパラグラフを読み終えた時点で,気がついたことをみんなであげてみます。
このような方法ですので,ゆっくりとしか進みません。予定した時期までに1冊読み終えないかもしれません。その場合は,8~9月に集中して残りを読み切ります(こちらは詳細は未定です)。

参加資格

どなたでも。
ただし,次の①~③に該当できる方を優先します。①原則として,毎週参加できる方。②原書を自分で用意できる方。③Zoom接続にかかる費用などを自分で負担できる方。

参加申し込み

参加をご希望される方は伊藤(tito@edu.hokudai.ac.jp)までご連絡ください。ただし,人数があまりにも多くなると連絡調整だけでも大変ですので,上限を12名としたいと思います。オーバーした場合は,また考えてみます。

この案内は転載自由です。どうぞよろしくお願いします。

楽しいなつやすみ読書会のお知らせ(終了しました)

デイヴィッド・シルヴァーマン 渡辺忠温訳 (2020). 『良質な質的研究のための,かなり挑発的でとても実践的な本:有益な問い,効果的なデータ収集と分析,研究で重要なこと』(新曜社)を夏休みの間にゼミで読むことにします。

当ゼミでは幼児・児童の言語行動をさまざまな方法により調査しています。いわゆる質的方法も選択肢の一つです。

質的研究についてはすでにさまざまな入門書が出版されています。本書はその中にあって,質的方法の深い理解を提供してくれるものです(と期待しています。まだ全部読んでいないので (^^))。

Twitterで本書のことをつぶやいたところ,思いがけず反響があり,都合がつけば参加したいという方からのコンタクトもありました。そこで,この読書会はいちおうはゼミ活動としますが,学外からの参加者も許可するオープンなものとしたいと思います。

概要

期日: 8月31日(1,2章),9月7日(3,4章),9月14日(5,6章)
時間帯:17~19時

進め方:

  1. 各章ごとに担当者を決めます。担当者は,読書会のために設定したGoogle Driveにレジュメを作成/アップロードしてください。
  2. 読書会で行うのは,「レジュメを完成させること」です。したがって,担当者が作成したレジュメは参加者で共有され,読書会の間にレジュメが参加者によって編集されていきます。たとえば,新たに気付いたこと,重要だと思った箇所,論点の提示とコメント,参照すべきドキュメントへのリンクの挿入などが行われます。(ですので,担当者が負担する責任は相対的に軽くなります。)
  3. ビデオ通話はGoogle Meetを使います。Googleさまさまですね! (状況によってはZoomするかもしれません)

参加方法:

  1. 参加希望者は,伊藤(tito [@] edu.hokudai.ac.jp あるいは @dunloeito)宛に連絡をください。Google Driveの共有と共同編集者の設定を行います。
  2. レジュメ担当者と担当章は下記の通りです。レジュメ作成を希望したい章があれば,あわせて申し出て下さい(レジュメ作成は参加の要件ではありません)。なお,1章は見本のレジュメを作成する関係で,伊藤が行います。

1章 無数の計りしれない習慣 (伊藤)
2章 質的データを見出し,制作することについて (及川さん)
3章 出来事か,シークエンスか (トマシーンさん)
4章 質的調査を応用する (太田さん)
5章 質的調査の美学 (海老田さん)
6章 とても短いまとめ (侯さん)

連続読書会を開催します(終了しました)

教育学研究のための理論や方法論を学ぶための連続読書会を企画しました。
大学院生・研究生を主な対象としていますが,どなたでもご自由に参加できます。

日時:毎月第3土曜日 13:00-17:00
会場:北海道大学大学院教育学研究院附属子ども発達臨床研究センター C302
なお,7月20日のみ,北海道大学教育学部棟 3階大会議室となりました。ご注意ください(6/17追記)。

読むもの:ブリュノ・ラトゥール 伊藤嘉高(訳) (2019年)『社会的なものを組み直す:アクターネットワーク理論入門』法政大学出版会

スケジュール

第1回 2019年 4月20日 企画趣旨説明・序章
第2回 2019年 5月18日 第1部
第3回 2019年 6月15日 第2部
第4回 2019年 7月20日 翻訳者 伊藤嘉高先生 ご講義

社会学領域で常に注目を集めてきた,ブリュノ・ラトゥール自身によるアクターネットワーク理論の解説をこの機会に読みたいと思います。

「子ども」や「発達」といった素朴な心理学的概念に対して,80年代から90年代にかけて社会学的な脱構築が行われてきました。子どもとは生物学的に未熟な,一方的に社会化されるだけの存在だという考え方は社会的に構築されたものであり,むしろ子ども自身は社会的な過程に能動的に関与している,という説明のされかたが普及したのです。

一方で,2000年代に入り,その主導者であったアラン・プラウトは「子ども」なる概念のハイブリッド性に言及するようになりました。すなわち,子どもを未熟・成熟,文化・自然といった二分法的対立のどちらかに位置づけてそれで満足していてはならず,そうした存在が成り立つ複雑な過程に注目しなければならないとされます。アクターネットワーク理論は,その際にプラウトによって援用されています(詳しくは,アラン・プラウト『これからの子ども社会学』(2017年,新曜社))。

そこで,本企画では,アクターネットワーク理論から「子ども」なる存在をどのように理解できるのか検討するための準備として,上記の文献を関心のある方々と輪読したいと思います。

さらに今回,翻訳をされた,新潟医療福祉大学 医療経営管理学部の伊藤嘉高先生を講師としてお招きすることができました。同書を読む過程でどうしても不明な点が出てくると思われますが,それらについて,伊藤先生にご説明をしていただけることとなりました。 実際に翻訳をされた先生からの貴重なお話をいただける,またとない機会ですので,ぜひお誘い合わせの上ご参加ください。 (なお,伊藤先生においでいただけるのは7月20日のみですのでご注意ください。)

ご参加の場合は,あらかじめ 下記のGoogle formより参加申込をお願いいたします。

申込サイト

どうぞよろしくお願いいたします。

なお,本企画は子ども発達臨床研究センター発達支援部門プロジェクトとして開催されます。開催に際して,同センターからの支援を受けています。

第1期ゼミ生が卒業しました

2019年3月25日に北海道大学にて卒業式がありました。

言語発達論ゼミで卒業論文を書いたお二人も,そろって卒業です。

4年前に立ち上げたばかりの,海のものとも山のものともつかないゼミに足を踏み入れてくれたお二人。感謝しています。

ぜひ,楽しい人生を送ってください。ご卒業おめでとうございます。